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『ボヴァリー夫人』  ―毒りんごの樹―

 

先日、リーブル ド ポッシュというフランスの出版社のサイトをみていると「あなたの人生を変えた20冊の本」というテーマが紹介されていたので覗いてみたところ・・・。

 

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みんな知っている『アンネの日記』や デグジュペリの『星の王子様』、ミュージカルでお馴染みのヴィクトル・ユーゴーの『レ ミゼラブル』も。

そして今年H.P.FRANCEのLamp Harajyukuとコラボレーションした映画でボリス・ヴァインの『うたかたの日々』もランクイン。

いろいろとありますが・・・・。

ありました! 私の大好きな「人生を変えた本の1冊」が!

 それはフロベールの『ボヴァリー夫人』

どんなお話かというと・・

ボヴァリー夫人(エマ)は医者だというけれど医者の資質としては微妙な人の妻となってしまった。自分は本当は教育も貴族的な寄宿学校で受け、もっと華やかな生活が送れるはずだと田舎で悶々とするエマ。

何かやりたいという向上心が男と浮気を繰り返し結局は借金を負って、お金が返さなくなって砒素を飲んで自殺してしまうという失敗の人生のお話。

 

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150年まえのお話ではありますが、まあ読んでいるとだんだん不安になってきます。 モクモクと黒い雲が立ち込める感じといってもいいかもしれません。

「あれ?私のクレジットカードの支払い残高あといくらだったかな?」 と読んでいる途中で今月の支払いを確認する私。

 

クリスマス前にお金のコラムを書いている私・・・いやになりますが続けます。

 

『ボヴァリー夫人』にはこんな下りがあります。 

une demande pécuniaire, de toutes les bourrasuques qui tombent sur l’amour, était la plus froide et la plus déracinante

「金の無心は恋を襲う嵐のうちでいちばん冷たく、そして根こそぎにする破壊力をもつ」

シンプルで明快な事実です。 

何気ない日常を自分もいつかこんな明瞭で美しい言葉がつらつらと書ければなあ、とフロベールの文章には惹きこまれてしまいます。

 

書く、といえばこの作品には浮気男がエマと縁を切るべく手紙をしたためる場面があります。 でも、エライですよね。 ちゃんと文章にするのですから。 

 

「かわいいひとよ、私たちの将来の立場がどんなに安定のないものであるか、理解することができなかった。私もまた最初このことをよく考えなかった。そして結果を予想せずに、マンチニールの木陰でもあるごとく、あの理想の幸福の陰に安らかに休息していました。」

ところで疑問なのが「マンチニール」という木ってなに?ということですが。調べてみると・・・

 

 

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 「触るな、危険」の標識が!!

きゃー、こわい。

 

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アンティル諸島に生える猛毒をもった樹でした。 樹液に触れても危険。雨宿りにこの木の下は絶対にダメです。

 

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 この木から落ちたスモモのような果実は食べると呼吸困難で痙攣を起こしてしまうそうです。 触ってもだめ!!

浮気の代償としてこの「マンチニール」の木を比喩として手紙にしたためていたのですね。 

 

クリスマスプレゼントにメッセージカードを添えて、なにか素敵な言葉を書いてみるといいかもしれませんね!ラインやメールとは違う、自筆のあなたの気持ちを添えてみてはいかがでしょうか?

では素敵なクリスマスをお過ごしくださいませ!

 ボヴァリー婦人

clumnist/KAIDA

2011年アッシュ・ペー・フランス入社。 横浜タカシマヤのgoldieにて勤務。学習院大学大学院フランス文学修士修了。好きなものは重いテーマを扱った小説。文学とファッションなど徒然なるままに書いております。

 

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イラスト Oki

2012年アッシュ・ペー・フランス入社。以後goldie池袋店、横浜店を経て現在は渋谷パルコにて勤務する。多摩美術大学美術学部工芸学科卒業。独特なタッチの水彩画のストはお客様のファンも多い。

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