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味覚回帰

 

私はドラマが好きです。 特に逃亡ものといわれるものが好きです。

逃亡生活の間の食事は? 移動手段は? 着るものは? 所持金は?洗濯は? 寝るところは? と興味が尽きません。

 

先日、テレビ朝日系列で 「実録ドラマスペシャル 女の犯罪ミステリー 福田和子 整形逃亡15年」はもちろんPSで録画をして観てみました。

今回は名女優寺島しのぶさんが福田役で登場。 以前には大竹しのぶさんが演じていました。 いずれも大女優の方ですね。

この事件は1982年に起きた「松山ホステス殺害事件」の犯人・福田和子の逃亡劇だが1997年(平成9年)まで逮捕されるまで約15年にわた整形を繰り返しての逃亡劇で知られています。

福田和子は事件を起こした後に、逃亡先でホステスとして働きます。その時に知り合ったお客が金沢の老舗の和菓子屋の社長。彼女は女将として働いてお店を改装するほど繁盛したとのことです。 コミュニケーション能力と商売の勘があったのでしょう。

後にここでも結婚を渋る和子に和菓子屋の親族から身元を怪しまれますが、捕まる寸前で逃亡に成功します。

謎なのですが、なぜか逃亡先でパトロンをしっかりと見つけることができたようです。不思議ですよね。

後に彼女と関わった男性はこう振り返ります。

「和子のつくる料理は美味しくて上品な薄口であった」

おそらくですが私が推測するに彼女が長らく逃亡生活ができたのはこの料理が上手であったことが要因では、と思います。

彼女にとって長いホステス経験からちょっとの時間で何品も料理をつくるのは何でもないこと。彼女の作る料理は男性の心を確実に制し、拘束力をもっていたのでしょう。

味覚というものは年齢を重ねるほど子どもの頃の味覚に回帰するといわれ、男の40代は必ず生まれ育った家庭の味へと戻っていきます。

この事件はともすると整形逃亡というセンセーショナルな見方が大半をしめていますが、証言者の「料理の上品な薄口」という味付けはひとつのキーワードとして見逃せないでしょう。

鹿島茂先生のご著書に『かの悪名高き十九世紀パリ怪人伝』(小学館)があります。 その中に出版界の重鎮のヴェロン博士が紹介されています。 いまでいう広告代理店のはしりで財をなした人物なのですが、彼はデブでハゲでブサイクでおまけに花柳病(つまり梅毒持ち)で女好き。 最悪ですね。

 

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オノレ・ドーミエ作 国立西洋美術館所蔵

http://collection.nmwa.go.jp/G.2000-0841.html

彼は金満家たちが陣取るオペラ座のボックス席でバレリーナの卵やら歌手を視姦するように物色しては女漁りをしていたようです。

そんな彼はラシェルという超美人の女優さんを愛人に持ったものの結局は結婚には至りませんでした。

なぜならヴェロン博士は自分の雇っていた家政婦の作る料理しかたべられなかったため、家政婦を捨ててまでその愛人の元に行くリスクは冒せなかったのです。 つまり味覚回帰です。

 

 

料理って怖いですね・・・

ところで皆さんにはそんな地獄のレシピはお持ちでしょうか?

ぜひご教授くださいませ。

 

 

コラム 筆者 Kaida

2011年アッシュ・ペー・フランス入社。 横浜タカシマヤのgoldieにて勤務。 学習院大学大学院仏文学修了。日本フランス語フランス文学会会員。文学とファッション、社会学など顧客様に励ましのお陰で不定期ながらも執筆しております。

 

 

kaida