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渋谷109

 

わたしはココナッツのあの独特の匂いが苦手である。

ココナッツミルクのがたっぷり入ったタイカレーも食べれない。 美容室でもこの香料が入ったものは丁重にお断りしている。偏頭痛を引き起こすのだ。

ミランダ・カーなどの多くのセレブが「美容と健康にいい」とブームに火の付いたココナッツオイルブームは恩恵に与る人もいれば、私のように深刻なダメージを受けるものもいる。

匂いと記憶は表裏一体。 ココナッツの匂いがダメな理由を辿っていくと意外に昔働いていた職場と深く関わりがあったのではないか、と感じる。

 

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実は私、空前のギャルブームの2000年の頃に渋谷109で働いていた。 働くといっても、35センチのエナメルのミニスカートをはいているスタッフと一緒に店頭に立っていたわけではない。

仕事内容は洋服の生産管理。売れているショップの売れている商品をサンプルを買い集めて、サイズや仕様を修正したりもしていた。  ギャルスタッフも突然来なくなるのは日常茶飯事。時にはオープンミスも。その度に辞めたスタッフを穴を埋めるべく採用活動。

「突然仕事に来なくなるギャルの思考をめぐって」

このようなタイトルの研究論文が一本仕上がるほど毎日いろいろな事が起こった。とにかくこの年代の女の子は凄まじいエネルギーだ。キャバクラに遊びにいくサラリーマンのような気持ちでは難しいかもしれない。

さて本題に戻るとなぜココナッツの匂いが嫌いになったかを振り返ってみるとここの休憩室がこの匂いで充満していたからではないかと。

お昼でセブンイレブンで買ってきたカツ丼もチョコパフェもメロンパンも吉野家の牛丼でさえ、どれもこれも同じ味しかしないのだ。

そう、ココナッツ味だ。

そのココナッツ臭はきつく充満しており私の嗅覚を狂わせ舌を麻痺させ疲労させる。

香りは記憶を呼び覚まさせるということか。

 

 

コラム 筆者 Kaida

2011年アッシュ・ペー・フランス入社。 横浜タカシマヤのgoldieにて勤務。 学習院大学大学院仏文学修了。日本フランス語フランス文学会会員。文学とファッション、社会学など顧客様に励ましのお陰で不定期ながらも執筆しております。

FLO Kaida 20160325