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ピンクのシャネルスーツ

 

タカシマヤの地下で崎陽軒のシュウマイ弁当を買ってエスカレーターで上に上る。

丁度上がったところに立派な佇まいのシャネルブティックがある。

さすがにシュウマイ弁当片手にパーカー姿で入店するわけにはいかないのでササっと今年のディスプレイをチェック。

季節の変化とともにピンクのシャネルスーツが飾っていました。

一見いつもと変わらない典型的なあのシャネル・スタイルのスーツ。

頑なにこのスタイルを通すには何か理由があるはず。今回はロラン・バルトの視点から考えてみました。

 

記号学で知られるフランスの哲学者ロラン・バルト(1915-80)。

彼は67年9月に「マリ・クレール」に執筆したシャネルについてエッセイを残しています。

彼はシャネルスーツと紳士服には「品格」という共通の理想を持っていると指摘しています。「品格」は19世紀の社会的価値そのもの。

「民主化されたばかりの社会では、上流階級と言われる階層の男性が金を見せびらかすことは禁じられていたがー妻にそれを代替させるのはつねに許されていたけれども ーとにもかくにも、ごく目立たない細部を通して『自分を格上げし』、卓越することができたのである。シャネル・スタイルは、この歴史的遺産を引き継ぎ、洗練させ、女性化したものである。」と彼はシャネル・スーツの普遍性について考察しています。

 

そして同時に「シャネルはいつも同じ型を作って、毎年それに『変化をつける』だけだ。」彼は指摘しています。

 

そういえば半世紀たった2018年のランウェイではモデルがツイードのスーツにビニール素材をまとっていましたね。

絶妙な「変化」です。そしてなによりも明確にトレンドを提示してくれます。

 

 

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「シャネルはラシーヌのように優雅で、パスカルのように厳格主義者で、ラ・ロシュフコーのようにモラリストで、セビニィ婦人のように繊細、そのうえ、あのグランド・マドモアゼルのように反逆的だ」

ラシーヌの悲劇の戯曲と例えるところが素敵です。

このようにフランスの大御所哲学者も大絶賛のシャネル。

 

彼はテクストを説明するときにはシニフィアン(形式媒体、文字)シニフィエ(意味内容、イメージ)を多用します。たとえばシニフィアンが「ピンク」でシニフィエが「春のイメージ」

 

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そういえばピンクのシャネルスーツ。

私にとってのピンクのシャネルスーツのシニフィエといえばジャクリーン・ケネディ。

しかも血まみれのシャネルのピンクのスーツ。

 

ケネディ大統領が暗殺されたときに隣にいたジャクリーンを連想してしまいます。

子どものころに見た資料映像はやはり今もトラウマ級のインパクトです。

頭に2発の銃弾を受けたケネディ大統領の返り血で血染めになったピンクのシャネルスーツでその1日を過ごし、側近の助言を拒みそのスーツを脱ぐことを拒んだという。

彼女はメディアを通して全世界にその悲劇を知らしめるように赤く染まったスーツを着用。ファーストレディとしての究極のセルフプロモーションともいえるでしょう。

 

ピンクのシャネルスーツの<シニフィアン>。皆さんはなにを想像されますでしょうか?

もうすぐ春はそこまできています。素敵な春の装いをしたいですね。

 

コラム執筆  戒田格(かいだ いたる)

 

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2011年アッシュ・ペー・フランス入社。 横浜タカシマヤのgoldieにて勤務。横浜店8年目絶賛突入中~。学習院大学大学院フランス文学修士修了。 今週は中目黒のOGGIのオレンジピールチョコレートに夢中。