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炎上する自由

最近テレビの番組の内容の様子が妙なことになっています。

朝テレビをつけると、連日政治家やタレントやこの種のセクハラ問題で男性が泣く姿を見掛けます。

清々しい朝。

出勤前にシャワーを浴びる前にこのような大人の、しかも50才前後の「男泣き」に遭遇してどっとこちらも疲れてしまい、折角の一日のスタートが台無しです。

 

そういえば、ル・モンド誌の寄稿記事においてカトリーヌ・ドヌーブが「しつこい誘いや不器用な口説きを、性犯罪と同一視するのは間違い」と公式発表したのが一時期話題となりましたね。

そもそもフランスは<ドンファン>的な男性が良いとされるお国柄。女性を口説かない男は如何なものか、という思想があります。

彼女の3番目のお相手で日本人にも馴染み深いイタリア俳優の故マルチェロ・マストロヤンニを思い出せば納得です。そういえばドヌーブとの間にお嬢さんがいらっしゃいますね。

さてこの寄稿文のキーワードのひとつがフランス語の<importuner アンポルテュネ>という動詞。

これは迷惑がらせる、つきまとう、といった意味で 名詞化するとimportunitéとなり「迷惑」、複数形では「しつこい誘い」となります。

「男性がしつこく口説く自由」を認めるべきだ、というドヌーブの主張。これだけ聞くと詩的な表現ですが「迷惑をかける自由」とも取れますね。

たしかに彼女は女性たちが「口説き下手と性的な暴力行為を混同しないくらいの判断力はある」と主張しています。

しかしその先にある、思いどおりにいかなかった男性の報復やパワハラといった女性の恐怖心には触れられていなかったように思います。

この騒動はファッション業界の著名スタイリストのモデルに対してのコレクションの舞台裏の行動にも波及。

重鎮カール・ラガーフェルドは「パンツを脱がされたくないのならモデルになるな、修道女になれ!」と激怒。むろんモデル保護団体も激怒。

このセクハラ問題、既に解決の落とし所とタイミングをすっかり失ってしまったように思います。誰が何を発言しても「匿名」にて炎上する状況となります。

私はあらゆるセクハラや女性蔑視という見解には反対という意見を前提に語らせて頂きますね。

神戸女学院大学の名誉教授の内田樹先生は

自分が感じていること、考えていることを発表するときには、できるだけ「自分が死んだら、これと同じことを感じたり考えたりする人がいなくなる」ことだけを選択的に語る方がよいと思います。 と仰られています。

匿名でのSNSでの発言というのは個人情報を特定されないために「みんながいいそうなこと、みんなが同意してくれそうなこと」だけを語っています。

本人はユニークなことを語っているつもりでも、同じ意見を語っている人間は他にも沢山いるし、その人は「いくらでも替えが可能で、いなくなっても別に困らない人」ということになります。

「いてもいなくてもどうでもよい人」よりは何かしら炎上発言をするほうが人間らしくてよいと思うのですが、いかがでしょうか。

今回のJAMIN PUECHのアイコンとなっている女性はジョセフィン・ベーカー。

女優、ダンサー、女性人権開放活動家などこの人物は一言で現わすことはできません。1954年には日本の宝塚でも公演を行っています。

 

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フランスでもっとも成功したアメリカ人のベーカー。アメリカでの偏見ゆえに1937年にフランス国籍を取得した彼女。

「みんながやりそうなこと、同意しそうなこと」には無縁な人物のジョセフィン・ベーカー。

今回のJAMIN PUECHのアイコンにしたデザイナーの審美眼と現代抱えている問題がマッチしているのではないかと思います。

 

コラム  戒田格(かいだ いたる)

 

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2011年アッシュ・ペー・フランス入社。 横浜タカシマヤのgoldieにて勤務。横浜店8年目絶賛突入中~。

学習院大学大学院フランス文学修士修了 専門はロートレアモンなど19世紀フランス詩。

最近の休日はOGGIのオレンジピールとチョコレート独りバーボン宅飲み。