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デパートに行こう!

 

最近デパート行ってますか?

 

先日『デパートに行こう!』(講談社文庫 真保雄一著)を読みました。冒頭から辛辣な文章で始まります。

主人公の唯一の心の寄りどころは離婚後デパートで娘と会う機会。

しかし娘には無常な言葉で返される。

 

 

「ダサいよデパートなんて。みんなそう言っているよ。おばさんと子どもの服ばっかりだし」

「(・・・・)だってたまに娘とあうんじゃない。いっつも同じデパートだなんて、恥ずかしくないの?あたしのこと、ちっとも考えてない証拠だよ。あたしは父さんが―そんな父さんが一番ダサいっておもう。」

 

強烈な娘の一撃である。

それまでにいろいろな確執があったにせよ、本当にこの主人公には同情せざる得ません。

彼にとってのデパートは家族の思い出そのものでしたから。

せっかく娘様にお会いになる楽しみにしていた貴重な機会だというのに、「デパートは嫌だ」と言われてしまうと、働いているこちらも身も辛くなってしまいます。

では現実のデパートの立ち位置はどうなっているのか、数値化して検証してみましょう。

ネットで調べてみると来店頻度は「ほとんど行かない」37.8%「利用経験がない」8.3%(2018年マイボスコム調査)

来店頻度も「半年に1度」(17.3%)「2~3ヶ月に1度」(17.3%)「月に1回」(11.9%)

さらに主だった理由として

「価格が高いものが多い」

ショッピングモールの価格よりマルはひとつふたつは多いかもしれません。

確かに百貨店で値札を見るお客様には笑顔がない方が多い印象です。なにか自分の物欲と現状との、戦いのような気迫を感じます。

「駐車場が混む」

よくお客様からお聞きします。古い百貨店だと車体とスペースが合わなくて傷がついた、など。

「店員がわずらわしい」

なるほど、こちらもお仕事ですから最低限のお声掛けくらいはいたしますが、実際買いものでのストレスの一因として店員の接客が挙げられているのも真実のひとつです。

 

 

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最近ではファストファッションの店舗の他に、個人売買などのフリーマーケットサイトも猛烈な勢いで市場を席巻しています。

リサーチ会社で調べてみると2018年6月期のメルカリの売り上げが2430億。

年度は変わるものの、これは百貨店の2017年の売上高で比較すると2位の阪急梅田店2403億と1位の伊勢丹新宿店2741億の間に匹敵する勢力です。(因みにgoldie横浜店のはいっている横浜タカシマヤは全国8位の1316億)。

小売業界のビジネスモデルは日進月歩で激変しています。

一方でデパートは、ブシコーが発明した19世紀半ばにパリで産声をあげた世界初のデパート《ボン・マルシェ》から、そのコンセプトの枠組みは大きくは変わっていない(ような気がします)。

ミドルクラスからアッパークラスの生活へ、お客様を押し上げるためのスペクタクルな空間としての装置は、百貨店ならではの役割といえます。

現在のパリの町並みの基礎となった、19世紀第二帝政期のセーヌ県知事オスマンによる大改造以来、百貨店の形式美を守るそのコンセプトの基礎は変わっていません。

 

年に2回ほどしか百貨店に足を運ばない知人がいます。

お中元とお歳暮の時期だけ。

同じブランドの商品なら進物に関してはどうしてもデパートのフィルターを通した包装紙でなければならない、とのことです。

そういえば義理の妹も結婚指輪は三越のティファニーと頑として譲りませんでした。

ときどきお客様からもgoldieのショッパーではなく髙島屋のバラの紙袋のご要望を頂きます。

よくよく観察してみると全国のデパートの売り場は似通っています。

一階にはおなじみのブランドの化粧品売り場、正面玄関近くには誰もが知っているハイエンドブランド。地下の食品売り場も、大体が周知のブランドがメインの売り場構成です。

コロコロお店が変わるビルよりはちょっとした「安心感」があります。横浜だと「あ、ここに崎陽軒がある」みたいな・・・。

こうしてみると百貨店というのは「形式美」が最優先事項で1世紀超えても百貨店ユーザーのお客様の意識も大きく変わっているわけではありません。

 

 

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goldieは取り扱いのブランドを大きくコロコロと変えるショップではありません。

それが頑なな「形式美」とまではいかないまでも、お客様に安心感を与えているのも確かな事実です。

 

まだまだ暑い日が続きますがデパートに涼みにお越しになってはいかがでしょうか?

ちょっと余談ではありますが、先日新宿の某百貨店のお手洗い前のベンチで休憩していると、面白い人に出会えました。くつろげるスペースがあるので、たくさんの方がいらっしゃいます。

勉強不足な完成度の女装のおじさんが行ったり来たりしているかと思えば、かたや暑さで疲れ果て爆睡している営業途中のサラリーマン。

人目を憚らずずっと親戚の不満をぶちまけている主婦。 大学名が入ったエコバックを複数持っているオープンキャンパス帰りと思しき母と娘が志望校について真剣な話をしていたり。

泣き止まない子どもにお菓子をひっきりなしに与えている中国人のお母さん。ちょっとお子さんの後頭部が三段腹になっているのもご愛嬌。

たまにはお越しになると新鮮な出来事や商品にめぐり合えるかもしれませんよ。

 

では次回までごきげんよう。

 

 

コラム  戒田格(かいだ いたる)   DSC_4159 2011年アッシュ・ペー・フランス入社。 横浜タカシマヤのgoldieにて勤務。横浜店8年目絶賛突入中~。

学習院大学大学院フランス文学博士前期課程修了。修士論文はロートレアモンの19世紀フランス詩。

最近の休日はまめ新(http://www.nutsdom.com/)の和三盆ナッツをあてに独りバーボンオレンジ割りで宅飲み~。